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製造業のDXが進まない理由専任担当者がいなくても始められる進め方

専任のIT担当者がいなくても、現場の業務を整理するところからDXの準備は始められます。ただし、兼任の担当者に「空いた時間で進めて」と任せるだけでは続きません。何を変えるか、誰が決めるか、どの時間を使うかを経営者と現場で共有する必要があります。大きなシステムを入れる前に、一つの業務で試す進め方を考えます。

製造現場の通路で社員がタブレットを確認するイメージ
目次

なぜ中小製造業のDXは止まりやすいのか

紙の帳票や電話連絡には、長く続いてきた理由があります。現場で素早く書ける、異常に気づいた人がすぐ伝えられるなど、便利な部分もあります。そこを理解せずに入力方法だけ変えると、社員には仕事が増えたように感じられます。

また、生産管理、品質、営業で必要な情報が違うのに、同じ仕組みで一度に解決しようとすると、調整が大きくなります。担当者の能力だけではなく、目的が広すぎることや、部署間で判断する人が決まっていないことが停滞の理由になっていないかを確認しましょう。

まず「何を導入するか」ではなく、「どの困りごとが減ると現場が助かるか」を聞きます。二重入力、最新の図面を探す時間、問い合わせのたらい回しなど、具体的な場面から話すと、改善の対象を絞りやすくなります。

システム導入から始めない

DXは、紙を画面に置き換えるだけで完了するものではありません。情報を使って、仕事の進め方や判断、顧客への対応をどう良くするかが大切です。その入口として小さなデジタル化を行い、次に何ができるかを考えます。

たとえば生産実績の入力を電子化するなら、入力する人の負担だけでなく、その情報を誰がいつ見て何を決めるかまで確認します。集計が早くなっても、判断に使われなければ目的に届きません。IPAの製造分野DX推進ガイドにも、目指す姿や取り組み方を考えるための資料が用意されています。自社の状況整理の参考になります。

STEP1 業務を整理する

対象の業務について、依頼が来てから完了するまでを順に並べます。担当者、受け取る情報、使う帳票、次に渡す相手を書き出します。経営者や管理職の認識だけで作らず、実際に手を動かしている人へ確認してください。

例外の扱いも大切です。通常はシステムで処理していても、急な変更だけ紙や電話になることがあります。その例外を無視すると、本番で使いにくい仕組みになります。一日の仕事を見ながら、「どこで待つか」「何を探すか」を確かめると、説明だけでは見えなかった手間を発見できます。

STEP2 手作業や属人業務を見つける

手作業がすべて悪いわけではありません。内容を判断するために必要な作業と、同じ情報を写すだけの作業を分けます。属人化についても、熟練者の判断そのものを否定せず、判断の前提や確認箇所を他の人が知れるかを考えます。

候補が複数ある場合は、発生の頻度、困り方、変更に関わる部署、試しやすさで優先順位をつけます。効果が大きそうでも、関係する工程が多く、失敗時の影響が大きい業務は最初の対象に向かないことがあります。現場が変化を確かめられる範囲から選びましょう。

STEP3 小さくデジタル化する

一つの帳票、一つの工程、一つのチームに対象を限定して試します。何を確かめたいかを先に決め、入力漏れ、検索のしやすさ、集計までの時間など、実際に観察できる項目を残します。導入前の状態も確認しておくと、印象だけで判断せずに済みます。

現場の通信環境、手袋を着けた操作、端末を置く場所、アクセス権限なども確認が必要です。紙と電子の二重運用をするなら、その期間と終了条件を決めます。切り替えで支障が出た際の戻し方も用意し、いきなり本番の重要な工程を止めないように進めてください。

STEP4 社内に推進できる人をつくる

担当者には、技術に詳しいことだけでなく、現場の話を聞き、困りごとを整理する力が求められます。兼任であれば、改善に使う時間を予定に組み込み、上司が優先順位を調整します。通常業務をそのままにして担当名だけ付けても、活動の時間は生まれません。

決めてよい範囲と、経営者へ相談する範囲も明らかにします。担当者が休んでも運用できるよう、設定や手順、取引先との連絡先を組織で共有してください。手順書を作るだけでなく、別の人が実際に使えるかを確かめることが、担当者への集中を減らします。

STEP5 必要な部分だけ外部人材を活用する

社内だけでは難しいシステム設計や連携、情報管理は、外部の専門家へ相談する選択肢があります。その際も、何を良くしたいかという目的と、現場での判断まで丸ごと任せきりにしないことが大切です。

相談時には、業務の流れ、対象範囲、困っている場面、使える時間を伝えます。導入後の保守、データの取り出し方、契約終了時の扱いまで確認すると、使い続ける際の負担を考えやすくなります。高機能かどうかだけではなく、社内で回せるかを判断してください。

振り返りでは、現場の負担がどう変わり、情報がどんな判断に使われたかを確かめます。次に広げるか、修正して続けるかを決める。この積み重ねが会社に合う進め方をつくります。文章整理などへAIを使う場合も、生成AI導入前の三つの確認を合わせて行いましょう。